奥田中学校を語る上で、名将・坂本耕治元コーチの存在を外すことはできない。八村塁が野球少年だった頃、その天賦の才を見出してバスケットボール部へと引き入れ、「お前はNBAに行くんだ」と毎日言い聞かせた逸話は今や世界中で知られている。だが、本質は予言の的中にあるのではない。坂本氏が徹底したのは、規格外のサイズを持つ中学生を「ゴール下のセンター」という狭い檻に閉じ込めなかったことだ。
走らせ、ボールを運ばせ、アウトサイドからのシュートを許した。ミスを恐れて消極的になることだけを嫌った。そのフィロソフィーは、コーチ陣が変わった2026年の現在も奥田中のカルチャーとして深く根を張っている。枠にはめない。早熟なフィジカルに依存せず、大人になっても通用するフットワークとハンドリングを叩き込む。体育館の壁に掲げられた色褪せた賞状の数々よりも、日々の練習で交わされる「自分で判断しろ」という短い掛け声こそが、その証左だ。