印象的なタイトルである『泡と羊』。この2つのモチーフには、日々の生活を送る誰しもが経験するリアルな葛藤が投影されています。
まず「泡」は、シャンプーの泡で頭をガシガシと洗う日常の動作とともに、「思うようにいかなかった1日のモヤモヤを洗い流すこと」を象徴しています。日中に感じた悔しさや自分の不甲斐なさを泡と一緒に水に流してしまいたいという、素朴で切実な心理です。
そして「羊」は、「夜ベッドに入っても眠れず、反省ばかりが巡る夜に数える羊」を指しています。「明日こそは頑張ろう」「ちゃんとした自分になろう」と決意しながらも、理想通りにいかない現実とのギャップに苦しむ夜の姿です。
清水依与吏が描いたのは、完璧超人のポジティブシンキングではありません。「夜に誓った決意を翌朝あっさり挫折してしまうような情けなさ」をありのままに認め、「それでもまたシャンプーで洗い流して、今日から始めればいい」という、不器用な生き方への温かな肯定が込められています。