「瞬き」の誕生を語る上で欠かせないのが、実話を基にした映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』との強い結びつきです。結婚式を目前に控えて原因不明の難病に倒れ、長い昏睡状態に陥った婚約者を、8年もの歳月にわたり献身的に支え続けた岡山県の中原尚志さん・麻衣さん夫妻の記録は、日本中に大きな感動を与えました。
映画で尚志さん役を演じた佐藤健は、舞台挨拶や当時の特番インタビューにおいて「劇中の尚志さんは決して自らをヒーローだとは思っていなかった。ただ目の前の大切な人のために、当たり前の日常を積み重ねていただけだった」と述懐しています。清水依与吏はこの映画のラフ映像を観て、単なる「奇跡の美談」として消費するのではなく、8年間という途方もない歳月に潜む絶望、日々の疲弊、そしてそれでも消えなかった微細な光をすくい取るようにして作詞作曲に向き合いました。
清水依与吏は当時の制作ドキュメントや音楽誌の取材に対し、「綺麗事ではなく、生活の中で相手を想うことのリアルを突き詰めた」と語っています。劇中で佐藤健が見せた、決して派手ではないが誠実な眼差しや仕草の数々と、「瞬き」のメロディと歌詞が重なり合うことで、フィクションを超えた圧倒的な説得力が生まれました。