板場は完全な実力主義でありながら、年功と技術に基づいた極めて厳格な階級社会です。それぞれの役職には明確な責務が割り振られており、持ち場を超えた作業は原則として許されません。
【板場の主な序列と役職一覧】
- 1. 花板(はないた) / 立板(たちいた):板場全体の最高責任者・総料理長。
- 2. 煮方(にかた):出汁とすべての味付けを司る板場の心臓部。
- 3. 向板(むかいた):刺身(造り)や先付を担当する花形職人。
- 4. 焼方(やきかた):焼き物全般(魚・肉・炭火焼き)を担当。
- 5. 揚場(あげば)・蒸場(むしば):天ぷらや茶碗蒸しなどを担当。
- 6. 脇板(わきいた):向板の補佐、野菜の下処理や飾り包丁を担当。
- 7. 追い回し(おいまわし):仕込み、洗い物、掃除、雑用を一手に担う見習い。
なかでも混同されやすいのが「花板」と「立板」の違いです。一般的に「立板」は板場の最前線で包丁を握り、実務を指揮する現場トップを指します。一方の「花板」は、献立の立案から原価計算、顧客の好みの把握、さらには経営陣との折衝まで厨房全体の運営を総括する最高責任者を指します。店舗の規模によっては同じ人物が兼任することもありますが、組織上は花板が絶対的な頂点に君臨します。
味の決定権を握る「煮方」は、店の暖簾の味を守る要であり、実質的なナンバーツーとして強い権限を持ちます。刺身を引く「向板」は、卓越した包丁捌きと魚の目利きが求められる華やかなポジションであり、煮方と並んで板前の腕前が如実に現れる役職です。