SNSやネット掲示板の一部で「板宿本通商店街が寂れた」「閉店ラッシュが止まらない」といったネガティブな噂が囁かれるようになった発端には、地域のランドマークとして長年愛されてきた老舗店舗の相次ぐ営業終了があります。創業から半世紀を超えて愛されてきた洋品店や個人経営の飲食店がシャッターを下ろした際、長年のファンがSNS上で惜しむ声を投稿したことが、やがて「商店街全体の地盤沈下」という過剰な言説へと増幅された経緯が見受けられます。
しかし、商業動態の取材データや商店街振興組合の動向を精査すると、現実は全く異なる側面を見せています。相次ぐ閉店の直接的な要因の大部分は、業績不振ではなく「店主の高齢化と後継者不在による自発的な廃業」です。後継ぎが見つからず惜しまれつつ暖簾を下ろした区画には、数ヶ月の改装期間を経て、20代〜30代の若手起業家による飲食バル、地域密着型の調剤薬局、医療クリニックなどが次々と名乗りを上げています。
神戸市が定期的に公表している商業統計調査および歩行者通行量調査を参照すると、板宿本通商店街の通行量は三宮や元町といった都心型商店街を除けば、市内の近隣型商店街の中でトップクラスの数値を記録し続けています。空き店舗が発生しても長期間放置されるケースは極めて稀であり、賃料水準も安定して推移しています。つまり、表面的な店舗の入れ替わりを「衰退」と誤認した噂であり、実態は街の生命力を保つための「世代交代を伴う新陳代謝」の過程にあると捉えるのが妥当です。