住野よるによる原作小説『君の膵臓をたべたい』は、2016年「本屋大賞」第2位に輝き、累計発行部数300万部を超える大ベストセラーです。映画化にあたって脚本家の吉田智子が仕掛けた最大の工夫は、「原作にはない12年後の現在」を軸にした二重構造のタイムラインでした。
映画版では、母校の教師となった12年後の【僕】(小栗旬)が、取り壊しが決まった旧図書館の蔵書整理を頼まれる場面から物語が展開します。学生時代の記憶と、大人になった現在の葛藤が交互に描かれることで、観客は「失われた青春の煌めき」と「彼女が遺したメッセージの意味」を大人の視点からも深く追体験できるよう設計されました。
桜良の親友・恭子の12年後を北川景子が演じ、豪華な現代パートが過去の回想をドラマチックに引き立てました。この構成変更に対し、公開当初は原作ファンからの慎重な声もありましたが、クライマックスで過去の手紙(共病文庫)と現在の時間が繋がる鮮やかなカタルシスは、原作の精神を忠実に昇華させた見事な翻案として、原作者の住野よる氏をはじめ多くの読者・観客から高い支持を得ました。