『八つ墓村』歴代キャスト比較!渥美清・萩原健一から最新Nhk版の怪演まで

『八つ墓村』歴代キャスト比較!渥美清・萩原健一から最新Nhk版の怪演まで

『八つ墓村』歴代キャスト比較!渥美清・萩原健一から最新Nhk版の怪演までにまつわる興味深い視点を分かりやすく発信ます。

日本映画史において、1977年公開の松竹映画『八つ墓村』ほど観客にトラウマと熱狂を同時に植え付けた作品はありません。「祟りじゃ〜っ!八つ墓の祟りじゃ〜っ!」という濃茶の尼(任田順好)の絶叫フレーズは流行語となり、配給収入は当時の邦画歴代記録を塗り替える約20億円を記録しました。

この歴史的ヒットを牽引したのは、常識破りのキャスティングでした。まず最大の異色作と評されたのが、国民的喜劇俳優・渥美清による金田一耕助です。国民的キャラクター「車寅次郎」のイメージが定着していた渥美清を起用したことについて、監督の野村芳太郎と脚本の橋本忍は「従来の奇矯な名探偵ではなく、陰惨な事件を冷静に見つめる市井の狂言回し」としての存在感を求めました。劇中の渥美金田一は、お馴染みの頭を掻きむしる仕草を封印し、レインコート姿で黙々と事実を拾い集める観察者に徹しています。この抑制された佇まいが、村の狂気をより一層際立たせる結果となりました。

そして、観客の感情移入を一手に引き受けたのが、寺田辰弥役を演じた萩原健一(ショーケン)です。当時の萩原健一は自身の自著やインタビューで「撮影中は常に得体の知れない恐怖と閉塞感に包まれていた」と回顧しています。都会の孤独な青年が、突然巨額の遺産相続人として忌まわしい因習の村へ連れ戻され、逃げ場のない疑惑の渦に巻き込まれていく過程を、持ち前の生々しい焦燥感と繊細な表情で演じ切りました。

特筆すべきは、田治見要蔵を演じた山崎努の鬼気迫る怪演です。頭に2本の懐中電灯をハチマキで固定し、白木綿の着物に太刀と猟銃を携えて夜の桜吹雪の中を疾走する「津山事件」をモデルにした三十人殺しのシークエンスは、日本映画史上に残る伝説のシーンとなりました。山崎努は後年の回想録で、氷点下に近い過酷な深夜ロケのなか、狂気に憑りつかれた男の呼吸と身体の動きを極限まで突き詰めたと語っています。要蔵の放つ血の匂いと狂暴性が、観客の網膜に焼き付いたからこそ、半世紀近く経った今も本作はホラー映画の最高峰として君臨し続けているのです。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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