国政のトップや皇族が公費で外国を訪れる際、なぜ「外遊」という表現が使われるのでしょうか。その理由は、漢字の「遊」が持つ古典的な語源にあります。
日本語の日常会話において「遊ぶ」はレジャーや娯楽を連想させますが、古代中国の漢文における「遊」は、「自分の本拠地を離れて遠くへ移動する」「見聞を広めるために旅をする」という意味を持っていました。歴史の授業で登場する「遊学(故郷を離れて他国で学ぶこと)」や「遊説(政治家が各地を巡って自らの主張を説くこと)」と同じ用法です。
日本で「外遊」という言葉が定着したのは明治時代初期。1871年に欧米へ派遣された「岩倉使節団」をはじめ、近代国家としての制度や技術を学ぶために海外へ渡った先人たちの行動を「外国に出て見聞を広め、知見を深める」という意味を込めて「外遊」と呼んだことが起源とされています。決してバカンスを楽しんでいるわけではなく、公的な目的を持って国外へ赴く重い意味合いが込められています。