長きにわたり第一線で健筆を振るってきた佐藤愛子氏が、明確に断筆(執筆活動からの引退)を表明したのは、2026年に刊行された『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(小学館)でした。社会現象となった『九十歳。何がめでたい』の続編にして、作家生活の集大成となった一冊です。
断筆を決断した最大の理由は、「書くべき気力と体力をすべて使い果たした」という極めて率直な境地に達したからです。同作の中で彼女は、「もうヘロヘロ」「書くべきことはすべて書き尽くした」と赤裸々に吐露しています。
昭和から平成にかけて、自身のプライベートや家族の葛藤、社会への怒りや違和感を一切の妥協なく文章にぶつけてきた佐藤氏にとって、執筆とは常に命を削る「戦い」そのものでした。98歳を迎え、その戦いに自ら終止符を打ったのは、作家としてのプライドと責任感を最後まで貫き通した証拠と言えます。