この事件が社会に強い衝撃を与えた最大の要因は、社会的地位のある精神科医の父親と専業主婦の母親が、娘の異常な凶行を止めるどころか、全面的にサポートしていたという点です。その背景には、田村家の家族の生い立ちと経歴、そして極めて歪んだ家庭環境がありました。
瑠奈被告は幼少期から繊細な気質を持ち、小学校高学年の頃から不登校を経験していました。進学した学校にも馴染めず、次第に自宅に引きこもる生活が常態化。瑠奈被告は自身の感情のコントロールが難しく、感情が高ぶると家族に対して激しい暴言や暴力を振るうことがあったと法廷で明かされています。
精神科医として地域医療に貢献していた父親の修被告は、娘の精神的な不安定さを専門知識で治癒・コントロールしようと試みましたが、結果として娘に対する極端な過保護と迎合へと歪んでいきました。母親の浩子被告も含め、両親は瑠奈被告の機嫌を損ねないことを最優先にし、家庭内では瑠奈被告が絶対的な権力を持つ「主従関係」のような構図が定着していったのです。
法廷の証言では、両親が瑠奈被告を「お嬢様」「ルナ様」と呼び、瑠奈被告の指示には一切逆らえない状態だったことが判明しています。娘が「被害者を殺して頭を持って帰る」と言い出した際も、両親は警察への通報や精神科病院への強制入院などの適切な措置をとらず、娘の要求に唯々諾々と従う道を選んでしまいました。