畑正憲氏の挑戦はテレビの枠組みだけにとどまらなかった。1986年に公開された映画『子象物語 地球背負い』では、脚本や監督を手掛け、命の尊厳と過酷な自然環境の現実をダイナミックに表現してみせた。
当時のメディア・エンターテインメント産業において、動物をメインに据えた本格的なノンフィクションやドキュメンタリー作品は未開拓の領域だった。演出されたフィクションではなく、カメラの前で生き物たちが織りなす本物のドラマを捉える手法は、後の映像制作に絶大な影響を与えた。だがその裏には、天候不順や動物たちの予期せぬ行動、予算の膨張といった凄絶な現場の戦いがあったことは言うまでもない。