彼女の著作を振り返ると、その鋭敏な時代感覚にあらためて驚かされる。2000年代初頭に上梓された『ぷちナショナリズム症候群』では、若者を中心に広がるカジュアルな排外主義や閉塞感をいち早く言語化し、その後のソーシャルメディア社会における排他性の萌芽を的確に言い当てていた。
また、数十万部のベストセラーとなった『しがみつかない生き方』では、過度な上昇志向や承認欲求に縛られる人々に「諦めること」の積極的な意味を説いた。ステータスや人間関係への執着を手放すことの大切さを説いた彼女自身が、大都市の名声にしがみつくことなく地方へと身を投じた軌跡は、自らの著作で示した哲学を自らの人生をもって体現したプロセスそのものである。