フッ酸に曝露した際、一刻を争うのが初期対応だ。水での大量洗浄は基本中の基本だが、それだけでは組織内に浸透したフッ化物イオンを中和できない。ここで救命の鍵を握るのが、グルコン酸カルシウム軟膏(または注射)である。
この治療薬を速やかに患部に塗布・注入することで、フッ化物イオンとカルシウムを結合させ、体内のカルシウムが奪われるのを防ぐ。しかし、日本の多くの一般医療機関ではこの薬剤が常備されていないことが多い。事故発生から専門病院へ搬送されるまでの「空白の時間」をどう埋めるかが、生死の分かれ目となる。