出版不況が叫ばれる昨今の書籍市場において、皇族の手によるエッセイが数十万部規模の重版を重ねる事態は極めて異例です。『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP研究所)がこれほどの旋風を巻き起こしている最大の要因は、読者が抱いていた「皇室エッセイ=格式高く堅苦しい記録」という固定観念を根底から覆した点にあります。
作中で描かれるのは、優雅なプリンセスの生活だけではありません。深夜まで資料と格闘し、指導教官からの容赦ないダメ出しに涙をこらえ、自炊で失敗し、側衛(皇宮護衛官)を撒いてしまって大騒動を引き起こすなど、等身大のひとりの日本人留学生としての喜怒哀楽です。読者はページをめくるごとに、雲の上の存在だった皇族に強い親近感と敬意を抱くことになります。
さらに、情報番組や新聞各紙のロングインタビュー、文化系メディアへの露出が相次いだことで、本人のユーモラスで品格のある語り口がSNS(XやInstagram等)で拡散。「とにかく文章が上手で声を出して笑える」「知的なのに圧倒的に読みやすい」といった純粋なエンターテインメントとしての評価が定着し、普段は皇室関連の本を手に取らない若い世代やビジネスパーソンへ読者層が一気に拡大しました。