1950年代、伝説のシャンソン喫茶『銀巴里』で歌い始めた若き美輪は、「神武以来の美少年」と称され、一大センセーションを巻き起こした。その美貌と類まれなる知性に熱狂したのが、文豪・三島由紀夫である。
三島は美輪の美しさを「天上界の奇跡」と絶賛し、自ら戯曲『黒蜥蜴』の映画化や舞台化にあたって主演に熱望した。女盗賊・黒蜥蜴の妖艶さと凄みを演じきった美輪の姿は、演劇界に決定的な衝撃を与えることになる。男が女を演じる歌舞伎の「女形」の伝統とも異なり、かといって単なる西洋演劇の輸入でもない。知性とエロス、狂気が交錯する舞台空間において、観客は性別の彼方にある「絶対的な美」を目撃したのである。