ネット上の情報を見て「怪しい人物を通報すればすぐに現金が振り込まれる」と思い込んでいる人が後を絶ちませんが、それは完全な誤認です。実際に報償金5万円もらえる条件を満たすためには、法律上・運用上設定された極めて高い壁をいくつも乗り越えなければなりません。
報償金の受給要件を整理すると、以下の4つの条件がすべて完全に揃う必要があります。
第一に、提供する情報が具体的かつ直接的であること。単なる「近所に外国人が多くて怪しい」「不法滞在のように見える」といった漠然とした推測や風評は一切対象外となります。対象者の氏名、正確な居住場所、就労先、偽造旅券の使用事実など、入国警備官が直ちに捜査に着手できる決定的な一次情報でなければなりません。
第二に、その通報が直接の契機となって対象者に退去強制手続が執られ、最終的に「退去強制令書」が正式に発付される必要があります。入管による調査、違反調査、口頭審理、異議の申し出といった幾重もの審査プロセスを経て令書発付に至るまでには、数カ月から年単位の歳月を要します。途中で在留特別許可が下りたり、裁判闘争へ移行したりした場合には、令書が発付されないため支給条件を満たしません。
第三に、公務員が職務上知り得た事実に基づく通報ではないこと。警察官や自治体職員などが職務を通じて把握した事案については、当然ながら報償金の対象外と明記されています。
そして第四の条件こそが、一般の通報者にとって最大の壁となる「身元の完全な証明」です。金銭の交付を受ける以上、通報者は出入国在留管理庁に対して実名、住所、連絡先を明かし、身元確認書類を提出しなければなりません。後述するように、報償金を請求するプロセスそのものが、自らの身元を当局へ委ねる行為を意味します。