報償金目当て、あるいは感情的な動機で通報に踏み切る際、最も警戒すべきは「不法滞在の通報で個人情報がバレる懸念」と「関係者からの報復リスク」です。公的機関である入管が通報者の個人情報を対象者へ故意に漏らすことは守秘義務(国家公務員法第100条)により固く禁じられていますが、実社会では思わぬ経路から身元が特定されるトラブルが後を絶ちません。
典型的なパターンが、状況証拠による通報者の特定です。例えば、小規模な町工場や飲食店、アパートの隣人関係など、コミュニティが狭い環境で通報した場合を考えてみましょう。入国警備官が踏み込んできた際、「シフトの勤務時間や部屋の間取りといった内部情報を知っている人間は、あの同僚か隣人しかいない」と消去法で容易に察しがついてしまいます。
不法就労を差配しているブローカー組織や雇用主、不法滞在者本人から「密告者」として逆恨みを買った場合、直接の嫌がらせや脅迫を受ける危険性は否定できません。海外マフィアや悪質な人材派遣業者が背後に介在している現場であれば、そのリスクは金銭で贖えるレベルを遥かに超えています。
また、出入国在留管理庁の情報受付ネットには「電子メールを送信した者のIPアドレスを自動的に取得している」旨の警告文が掲示されています。近隣住民とのトラブルや私怨から虚偽の通報を行ったり、根拠のない誹謗中傷を送りつけたりした場合、偽計業務妨害罪に問われ、通報者自身が警察の捜査対象になるリスクすら孕んでいます。