資金力のある芸能人であれば、1本数十万円から100万円近くかかる自由診療のインプラント治療を受けることは難しくありません。それでもなお、部分入れ歯が選ばれるのには、医学的かつ職業上の明確な理由があります。
最大の要因は「ダウンタイムの有無と治療期間の圧倒的な短さ」です。インプラント治療は顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む外科手術を伴います。骨とインプラント体が結合するまでに数ヶ月から半年以上の待機期間が必要であり、骨造成(骨を増やす手術)を行う場合はさらに長期化します。また、術後の腫れや内出血が数日間にわたって顔に出るリスクがあり、連日のようにカメラの前に立つ人気芸能人にとって「顔が腫れるリスク」は致命的です。
加えて、ヘビースモーカーである場合や骨粗鬆症の持病がある場合、インプラントの定着率は低下します。外科手術そのものを避けたい心理や、万が一のインプラント周囲炎による骨吸収リスクを嫌い、「あえて身体への侵襲が極めて少ない高精度な部分入れ歯を作る」という決断は、極めて現実的かつ合理的な判断なのです。