不死川実弥のトレードマークである顔面や上半身の無数の傷。これらは単なる歴戦の証ではなく、彼の身を裂くような生い立ちと直結しています。
東京府京橋區出身の実弥は、7人兄弟の長男として生まれました。父親の恭梧は日常的に妻子へ暴力を振るう粗暴な男であり、他人の怨恨を買って刺殺されるという凄惨な最期を迎えます。残された小柄な母・志津を支え、実弥と次男の玄弥は「家族を守る」と誓い合いました。
しかしある夜、母が鬼と化して長屋を襲撃します。弟妹たちが次々と惨殺される中、実弥は家族を守るため、暗闇の中で包丁を手に必死で鬼と戦い、夜明けの光の中でその鬼が自らの母親であったという残酷な真実を突きつけられます。さらに現場に駆けつけた幼い玄弥から、パニックのあまり「人殺し」と罵声を浴びせられたことで、実弥の心は決定的な傷を負いました。
この事件後、実弥は自らの血が鬼を酩酊させる特殊な「稀血(なかでも極めて希少な最高濃度)」であることを自覚します。鬼殺隊に入隊する前は、日輪刀も持たずに稀血で鬼を誘き寄せ、太陽の光で焼き殺すという命知らずの戦法を繰り返していました。彼の体にある無数の傷の多くは、この単独鬼狩り時代に自らを囮にして刻まれたものです。
鬼殺隊に入り柱にまで上り詰めた実弥が、隊に入ってきた玄弥に対して徹底的に冷淡に接し、暴言を浴びせて突き放し続けた理由――それは憎しみではなく、「命の危険がある鬼殺隊を今すぐ辞め、どこかで所帯を持って幸せに天寿を全うしてほしい」という、不器用すぎる究極の兄弟愛でした。