復員後の船坂が遺した最大の功績の一つが、1966年に上梓された『英霊の絶叫 玉砕島アンガウル戦記』である。この著書は、従来の情緒的な回想録や自己正当化に終始しがちだった戦記文学の枠組みを根底から覆した。
彼が目指したのは、凄惨な戦場の現実を冷静かつ冷徹に描写する歴史ノンフィクションの金字塔だった。散華していった戦友たちの最期の瞬間、極限状態における人間の尊厳の崩壊、敵兵に対する複雑な心情の機微――。船坂の筆致は驚くほど客観的であり、自らの武勇を誇るのではなく、戦争という巨大な不条理の生贄となった魂の叫びを代弁していた。この作品のリアリズムは当時の文壇に強烈な衝撃を与え、後続のノンフィクション作家たちに計り知れない影響を及ぼした。