一方で、病的な異常とは正反対の生理的適応によって不完全右脚ブロックが引き起こされるケースも多々存在します。その最たる例が、若年者 スポーツ心臓 関連の現象です。
日頃から長距離走、水泳、サッカー、サイクリングなどの持久系トレーニングに励んでいるアスリートの心臓は、大量の血液を効率よく循環させるために自然と筋肉が発達し、内腔が拡大します。これを「スポーツ心臓(Athletic Heart)」と呼びますが、右心室の筋肉量や容積が大きくなることに伴い、電気信号が右室全体に行き渡るまでの物理的な距離が長くなります。その結果、病的破壊がないにもかかわらず、QRS幅がほんのわずかに延びて不完全右脚ブロックの波形を示すのです。日本のアスリート検診データにおいても、実業団や学生運動員の約10%前後にこの所見が認められますが、運動能力の高さを示す勲章であっても病気ではありません。
また、痩せ型で胸郭が薄い10代〜20代の若年男性にも極めて多く見られます。電極を貼る胸郭の物理的厚みが薄いため、心臓の表面を流れる微弱な電気信号がストレートに拾われ、右室流出路の伝導遅延が過敏に記録されやすい解剖学的要因によるものです。
ネット上で流布している「不完全右脚ブロックと診断されたら寿命が縮む」「民間の生命保険や医療保険に加入できなくなる」という言説も、事実無根のデマと言えます。不完全右脚ブロック 寿命や保険への影響について、大手生命保険各社の査定基準や引受審査ガイドラインを検証すると、基礎疾患を伴わない「孤立性不完全右脚ブロック」であれば、無条件での保険加入が承諾されるケースが標準的です。死亡率や心不全発症率に関しても、一般人口の平均値と統計的有意差がないことが国内外の大規模疫学調査で証明されています。