語学学習メディア『ブライチャーブログ』や『EnglishPlus』の現場レポートでも度々指摘されている通り、「canの過去形はcould」という図式は、半分正しく、半分は不完全な認識です。日常会話においてcanの過去形が使えない理由の核心は、助動詞couldが本質的に「行為の実現」を保証しない単語だからに他なりません。
英語の助動詞は、話し手の「心的態度」を表す品詞です。助動詞canの過去形couldが肯定文で意味するのは、あくまで「過去における一般的な潜在能力・継続的な状態」です。つまり、「その気になればいつでもできる能力を保有していた」というバックグラウンドを述べているに過ぎず、「その能力を特定の時点で発揮し、実際に何かをやり遂げた」という現実の行為までは含みません。
たとえば、「子どもの頃、速く走ることができた」という一般的な能力であれば、"I could run fast when I was a child." で完璧に通じます。しかし、「昨日の電車トラブルのなか、なんとか時間通りにオフィスに到着できた」という具体的な1回限りの出来事に対して "I could arrive on time." と言うと、ネイティブの耳には「時間通りに着く能力は持っていたけれど……(実際には着かなかったの?)」という仮定法のニュアンスとして響いてしまうリスクが生じます。このズレこそが、学習者が現場で直面する最大の壁です。