炭治郎の鬼化という衝撃的な事態が描かれたのは、単行本第23巻収録の第201話「鬼の王」です。夜明けとともに太陽光を浴びた鬼舞辻無惨の肉体は崩壊し、無惨討伐という鬼殺隊千年の悲願は達成されたかに見えました。戦闘直後、炭治郎は脈も呼吸も停止しており、富岡義勇らによって現場でその死亡が確認されていました。
しかし、無惨は消滅の直前、自身の肉体が滅びる限界の狭間で、自らの「想い」を炭治郎へ託す凶行に及びます。無惨は死の恐怖に直面した際、産屋敷耀哉が語った「人の想いこそが永遠であり不滅」という真理を歪んだ形で受け入れました。炭治郎が自分と同じ「日の呼吸」の使い手であり、太陽を克服した竈門禰豆子の実兄である点に着目した無惨は、死に瀕していた炭治郎の肉体に自らの全血液、力、そして自らの意志を一気に注ぎ込みました。
無惨の狙いは明確でした。鬼殺隊の手によって自らの肉体が消え去ろうとも、炭治郎を新たな「鬼の王」として覚醒させ、自らが成し得なかった「鬼殺隊の殲滅」と「不老不死の支配」を炭治郎の肉体を通じて永遠化させることでした。一度は心肺停止に陥っていた炭治郎の肉体は、無惨の超高濃度な細胞浸透によって急速に変異を起こし、絶望的な破壊者として息を吹き返したのです。