建物の外壁を取り払い、地域住民が自由に通り抜けられる中庭を作る。10年前なら「セキュリティ上のリスク」と一蹴されていたであろう設計だ。だが、この発想の転換こそが最大の起爆剤となった。
施設を孤立した島にするのではなく、街の一部にする。誰でもふらりと立ち寄れるコミュニティスペースを併設したことで、近所の買い物帰りの主婦や、放課後の子どもたちが日常的に行き交うようになった。「入居者の方々が街から孤立するのではなく、街の賑わいそのものが施設の中に流れ込んでくる」。施設関係者はそう語る。壁をなくしたことで得られたのは、確かな安全と、それ以上の生きがいだった。