なぜ彼女たちはこれほどまでに恐ろしい「悪女」として記録されたのでしょうか。その真相を紐解く鍵は、記録者である官僚たちの立ち位置にあります。『朝鮮王朝実録』を執筆・編纂したのは、厳格な儒教秩序を重んじる両班貴族たちでした。彼らにとって、王を籠絡して自分たちの既得権益を脅かした身分の低い女性たちは、何としても「絶対悪」として後世に残す必要があったのです。
歴代の韓国時代劇における描かれ方の変遷を見ると、その評価の変化がよく分かります。
- クラシックな時代劇(1980〜1990年代):激しい嫉妬に狂い、邪魔者を次々と毒殺・陥れるステレオタイプな悪女像。
- 近年の再解釈ドラマ(2010年代以降):『チャン・オクチョン 愛に生きる』などのように、党派争いの犠牲者となりながらも、自らの意志と愛のために身分差に立ち向かった聡明な女性としての側面を強調。
もちろん、彼女たちが行った陰謀や専横が正当化されるわけではありません。しかし、単なる個人的な性格の悪さではなく、「生き残るためには相手を殺すしかなかった」という宮廷の熾烈な権力闘争システムが生み出した悲劇のヒロインという一面も、近年の歴史研究では強く指摘されています。