万太郎の波乱に満ちた人生を語る上で欠かせないのが、彼を取り巻く濃密な人間関係とそれを具現化した実力派俳優たちの競演だ。物語は大きく分けて、土佐の生家「峰屋」、東京の拠点となった「十徳長屋」、そして学術の舞台である「東京大学植物学教室」の3つのコミュニティで展開された。
万太郎の幼少期から苦楽を共にした相棒・竹雄を演じた志尊淳は、本作で役者としての新境地を切り拓いた。お目付け役でありながら、誰よりも万太郎の才能に惚れ込み、自らの人生を賭して支え続ける献身的な姿は視聴者の涙を誘った。土佐編を締めくくる竹雄の決断と万太郎との別れのシーンは、ドラマ屈指の名場面として語り継がれている。
東京編で万太郎を受け入れた十徳長屋の住人たちも個性派揃いだ。差配人のりん(安藤玉恵)をはじめ、元彰義隊の倉木(大東駿介)や印刷工の前田(阿部亮平)など、社会の片隅で懸命に生きる庶民たちの温かな連帯が丁寧に描かれた。一方、東京大学で万太郎の前に立ちはだかった田邊教授(要潤)と徳永助教授(田中哲司)の重厚な演技は、学問の世界における権力闘争と知的好奇心の狭間で揺れる人間の業を見事に浮き彫りにした。