華麗なる一族。その響きは甘美だが、安藤和津の幼少期は決して平坦なものではなかった。彼女の父親は、犬養毅の三男であり、法務大臣や作家として活躍した犬養健。しかし、和津は本妻の子ではなく、健が愛した新橋の芸者・荻野アキとの間に生まれた子どもだった。
「日陰の身」としての自覚を強いられた少女時代。本家への遠慮と、世間からの冷ややかな視線。それでも父・健は和津を溺愛し、一流の教育を受けさせた。この複雑な家庭環境が、彼女の繊細な感受性と、のちにエッセイストとして開花する鋭い観察眼を養ったことは間違いない。光と影が交錯する生い立ちこそが、彼女の人間味あふれる魅力の源泉なのだ。