しかし、技術の進化は新たな安全上の課題を生み出した。最も注意すべきは、細菌感染のリスクである。一枚肉(ブロック肉)の場合、腸管出血性大腸菌(O157など)やカンピロバクターといった致死的な食中毒の原因菌は、基本的に肉の「表面」にしか付着しない。そのため、表面さえしっかり加熱すれば、中はレアの状態で食べても安全性が保たれる。
ところが、成型肉の製造プロセスでは、細かくカットされた肉片や脂身が何度も混ぜ合わされる。この過程で、本来は表面にしか存在しない細菌が、肉の内部深くまで巻き込まれてしまうのだ。厚生労働省も食中毒防止のガイドラインにおいて、成型肉や軟化処理肉については「中心部まで十分に加熱すること」を強く呼びかけている。
結着剤として使われるトランスグルタミナーゼ自体は安全性の高い酵素とされているが、問題はその構造上、レアやミディアムレアでの加熱調理が許されない点にある。外側だけを香ばしく焼き、内部に火が通っていない状態で口にすれば、深刻な食中毒を引き起こす危険性が跳ね上がるのだ。