ネット上で囁かれる「歩行器はいらない」「発達に悪い」という指摘は、単なる都市伝説ではありません。国内外の小児医療機関や専門学会から、明確な注意喚起がなされています。
日本小児科学会や米国小児科学会(AAP)をはじめとする専門機関の見解では、「歩行器を使っても赤ちゃんの歩行開始時期は早くならない」という結論で一致しています。むしろ、過度な使用によって自発的なハイハイやつかまり立ちの機会が奪われ、歩行発達が数週間から1ヶ月程度遅れるケースが報告されています。
医学的に懸念されている主な影響は以下の3点です。
第一に「股関節と足首への影響」です。歩行器に乗った赤ちゃんは、床を足裏全体で踏みしめるのではなく、つま先で床を蹴って進む「つま先歩き(尖足歩行)」の癖がつきやすくなります。また、座面の形状によっては股関節に不自然な開きや圧迫を与える懸念が指摘されています。
第二に「体幹・背筋・腹筋の発達機会の減少」です。赤ちゃんが二足歩行を獲得する過程では、床の上で転がり、ハイハイをし、自力でバランスを取りながら筋力を鍛えるステップが不可欠です。歩行器のフレームに体重を預けてしまうと、転倒を防ぐための防御反応やバランス感覚を養う機会が制限されます。
第三に「自発的な運動意欲の抑制」です。足先を少し動かすだけで思い通りにスピードが出てしまうため、自分の筋肉を使って姿勢を維持しようとする意欲が育ちにくくなります。小児科医が「歩行訓練の道具としては推奨しない」と口を揃えるのは、こうした運動力学的な根拠に基づいています。