亜鉛華軟膏の主成分は、鉱物由来の粉末である酸化亜鉛だ。第十八改正日本薬局方にも収載されているこの医薬品は、油脂性の基剤(主に白色ワセリンや流動パラフィン)に微粒子化した酸化亜鉛を練り込んだ極めてシンプルな構造を持つ。製薬・ヘルスケア産業が目覚ましい進化を遂げ、次々とハイテクな新薬が登場する現在においても、この古典的な軟膏が第一線で処方され続けるのには明確な理由がある。
酸化亜鉛には、浸出液を吸着して患部を乾かす「収れん・乾燥作用」と、外的な刺激物から生体を隔絶する「物理的シールド作用」の2つが同時に備わっている。排泄物に含まれる酵素やアンモニア、おむつのギャザーによる摩擦といった容赦ない刺激から、無防備な角質層を文字通り物理的な壁となって守り抜く。科学合成されたステロイドのように劇的に炎症を抑え込むのではなく、皮膚が自ら再生するための「シェルター」を作り出す点に、この薬の本質がある。