『赤いスイートピー』の熱狂も冷めやらぬ中、続いて解き放たれたのが『渚のバルコニー』である。キャッチーでありながら一筋縄ではいかない緻密なメロディラインは、当時の音楽業界に計り知れない衝撃を与えた。
サビに向けた巧みな転調と、日常のワンシーンを映画のワンカットのように鮮やかに切り取る作詞センス。ユーミンの提供曲は、単なる歌謡曲の領域をはるかに超えていた。歌い手である松田聖子の声質を極限まで計算し尽くしたサウンドプロダクションは、プロデューサーとシンガーが起こした化学反応の極致と言える。この時期の一連のヒット作によって、日本のポップスシーンの基準そのものが劇的に引き上げられたのだった。