串本海中公園が営業終了を発表した際、SNS上では「突然すぎる」「経営破綻したのか」といった憶測が飛び交いました。しかし、公開された経営資料および運営母体であった南海電気鉄道のグループ事業再編の経緯を紐解くと、極めて冷徹かつ構造的な事情が浮かび上がってきます。
最大の要因となったのは、他でもなく施設の激しい老朽化と建て替えにかかる天文学的な改修費用です。1970年のオープン以来、海上にせり出した海中展望塔や水族館本館は、常に激しい潮風と高波に晒され続けてきました。特に水深6.3メートルの海底を直視できる海中展望塔は、重量500トンを超える鋼鉄構造物であり、半世紀にわたって定期的な補修を施してきたものの、海水による腐食の進行は設計限界に近づいていました。
さらに、本州最南端に位置する立地ゆえに、将来想定される南海トラフ巨大地震への耐震基準強化や津波対策が喫緊の課題となっていました。関係筋の試算によると、海中構造物の総点検と現代基準での完全リニューアルには、水族館単体の年商を遥かに上回る数十億円規模の設備投資が不可欠な状況に陥っていたのです。
親会社である南海電気鉄道は、コロナ禍以降に進めてきたグループ中期経営計画において、鉄道沿線外の非中核事業の見直しと資産効率の改善を急ぎました。集客数がピーク時の年間数十万人規模から横ばい・微減傾向を辿るなか、過大な再投資リスクを避ける判断が下されたのが、串本海中公園閉館理由の核心でした。