本作が日本のロックシーンに与えた衝撃は、音響面および映像表現の革新性によって決定づけられました。当時21歳だった椎名林檎が提示したビジュアルとサウンドは、既存のポップス界の常識を根底から覆すものでした。
特に象徴的なのが、ミュージックビデオ(MV)に登場する真っ二つに切断されたメルセデス・ベンツ(通称「ヒトラー」と呼ばれるW114型セダン)です。当時の関係者インタビューや本人の回想によると、この車両はもともと椎名林檎が中古で購入し実際に愛用していた自家用車でした。それを惜しげもなく縦半分に切断し、荒涼としたロケーションの中央に配置して熱唱する姿は、自らの身体や過去との決別、内面的な引き裂かれを視覚化した伝説的アートワークとして今も語り継がれています。
また、サウンド面の要となったのが、彼女が敬愛するBLANKEY JET CITYの浅井健一(ベンジー)による客演ギターです。当時、風邪をこじらせて喉をつぶした状態で録音された椎名の狂気的なボーカルに対し、浅井の奏でるグレッチのギターは、まるで互いの魂を削り合うような凄絶なフレーズを叩きつけました。シンプルなブルース進行をベースにしながらも、不穏なテンションコードと歪んだフィードバックが絡み合うコード進行は、アマチュアギタリストの間でも長く研究対象とされています。
独特の「巻き舌」や息を吸い込む音までをも感情表現へと転化した歌い方は、単なるボーカルテクニックを超え、当時の彼女の生身の苦悩と気迫がそのまま刻まれたドキュメンタリーと言えます。