「ギブス」というタイトルそのものが、この楽曲の本質を痛切に物語っている。骨折した身体を固定し、傷が癒えるまで決して離さない医療器具。椎名林檎が描いたのは、相手がいなければ立っていられないほどの脆さと、それゆえに相手を縛り付け、自分自身をも縛り・守ろうとする「痛いほどの愛」だ。
歌詞の中で繰り返される「あなたはすぐに写真を撮りたがる」「あなたはすぐにカートの真似をする」という描写。ここには、目の前の恋人がどこか別の世界や理想に憧れ、自分の手から離れていってしまうのではないかという強烈な不安が透けて見える。自分が怪我をしたときに患部を包み込む医療用ギブスのごとく、主人公は愛する存在を不可分なまでに密着させ、精神的な共依存関係を築くことでしか安心を得られない。過剰な束縛はエゴの押し付けではなく、自分という存在が崩壊するのを防ぐための防衛本能なのだ。
「ここに居て」という言葉の裏側に潜むのは、甘いロマンティシズムではない。自分と相手の境界線が曖昧になるほどに同化したいという、どこか狂気すら孕んだ願望である。この圧倒的なリアルさが、聴き手の内面にある弱さや過去の痛痛しい恋愛感情と共鳴する。