首相候補をめぐる議論において、一般の有権者が陥りがちな二つの大きな誤解があります。この力学を把握していなければ、政局の行方を完全に見誤ることになります。
第一の誤解は、「世論調査で第1位になった候補が順当に選ばれる」という思い込みです。自民党総裁選の規定では、第1回投票で過半数を獲得する候補が出ない場合、上位2名による決選投票が行われます。決選投票では国会議員票の比重が圧倒的に高くなるため、たとえ国民的人気や地方党員票で1位になった候補であっても、「第2位と第3位の陣営が手を組む」ことで容易に逆転劇が起こり得ます。
第二の誤解は、「派閥が消滅したため、政策論争だけで勝敗が決まる」という見方です。実際には、政策の是非以上に「次の衆院選で自分を勝たせてくれる看板になるか」という、議員一人ひとりの生き残りをかけた損得勘定が投票行動を決定づけます。クリーンなイメージを求める都市部選出議員と、手厚い財政出動や農業支援を求める地方選出議員の間で利害は真っ向から衝突しており、政策の一致だけで陣営が結束することは稀です。