「なぜ、石原慎太郎は天才と称されたのか」。その答えを探るには、彼の人生が描いたあまりにも劇的な二つの軌跡――言葉を紡ぐ「作家」の顔と、国家や大都市を動かす「政治家」の顔――を直視する必要がある。芥川賞作家としての異才は、最初から規格外だった。原稿用紙に向かうと一気に物語を立ち上げ、推敲を重ねるよりも野性的な直感で言葉を走らせるスタイルは、昭和文学の枠組みを大きく揺るがした。
そして都政へと舞台を移した後の政治的決断もまた、常人の発想を遥かに超えていた。ディーゼル車規制や銀行への外形標準課税導入、首都大学東京の開設など、周囲が「実現不可能」と首を振った改革を、強固な発言力と世論の巻き込みによって次々と現実のものとしていった。知られざる裏話として、都庁関係者の間では「知事室での打合せは常に一瞬の閃きと決断の連続だった」と語られている。単なる論争好きの政治家ではなく、直感で物事の本質を看破し、電光石火で動く。それこそが彼が時代を超えて天才と呼ばれ続ける所以である。