長野県の山深い谷あいに、心地よい金属音と排気音が響きわたる。木曽森林鉄道動態保存プロジェクトの拠点では、かつて日本三大美林の木材を運び出した小型ディーゼル機関車が、ボランティアの手によって入念に整備されていた。
「このエンジンは半世紀以上前のものですが、構造がシンプルなぶん、手入れさえ怠らなければ今でも素直に回ってくれます」。油まみれの作業着を着た整備スタッフはそう語り、誇らしげにスパナを握り直す。木曽の森林鉄道は、かつて総延長数百キロに及び、日本の林業と木造建築を根底から支えた動脈だった。
近年では、実際に乗車して往時の木材搬出の息吹を体感できるプログラムが人気を博し、本格的な産業観光のモデルケースとして国内外から注目を集めている。