大川栄策にとって『さざんかの宿』は、まさに歌手人生の転機となった決定打だった。独特の「木彫り」の特技でも親しまれた彼の確かな歌唱力は、この一曲によって日本全国へと浸透した。累計売上は180万枚を超え、当時の音楽チャートの上位を長期間にわたって独占。演歌というジャンルが歌謡界の中心にあった時代を象徴する大爆発的ヒットとなった。
日本コロムビアが誇る当時の制作陣は、日本人の情念を極限まで引き出すサウンド作りを徹底した。哀愁を帯びたイントロのギターから、サビへと向かう感情の高まり。すべてが計算し尽くされ、かつ聴く者の胸を締めつけるリアリティを持っていた。