事故前の防災・危機管理マニュアルの出来も、惨事を招いた要因の一つとして挙げられる。石巻市教育委員会が作成した防災ガイドラインに基づき、各学校は独自の危機管理マニュアルを作成することになっていた。しかし、石巻市立大川小学校のマニュアルには、津波到達時の具体的な避難場所に「近隣の空地または公園」といった曖昧な記述しか存在せず、地理的特性に応じた具体的な高台への避難経路が明記されていなかった。
これは当時の学校危機管理行政における構造的な欠陥を示している。想定外の危機に直面した際、現場の教職員がマニュアルに縛られ、目の前にある裏山という自明な高台への避難を選択できなかった。規則を守ることと目の前の命を守る判断との間に生じた巨大な乖離が、大川小学校の悲劇を決定づけたのである。