対戦相手の先発投手が投じた球種は、内角低めギリギリに決まる時速96マイル(約154.5キロ)のシンカーだった。本来であれば詰まらされて打たされるか、ボテボテのゴロに仕留められるコースである。しかし、打席での洞察力は相手の配球パターンを完全に読み切っていた。
今シーズン見せている打撃フォームの変化も見逃せない。トップを作る位置をわずかに低く保ち、右足の踏み込みを以前よりもコンマ数秒遅らせることで、変化球に対するタメを作っている。この微妙な微調整が、内角の厳しい球に対しても肘をきれいに畳み、力負けせずに遠くへ押し出すスイングを可能にしているのだ。百戦錬磨の投手が投じた「渾身の一球」を粉砕した裏には、途方角もない緻密な観察と技術革新が存在する。