ニュース報道を見ると、「大和堆からスルメイカが消えたのは外国船の違法乱獲だけが原因だ」と思われがちです。しかし、海洋生態学および水産庁研究機関のデータが示す実態は、より複雑で深刻な複合要因にあります。大和堆 イカ不漁の理由には、看過できない大きな盲点が存在します。
盲点1:地球規模の海洋環境変動と「産卵場の水温上昇」
スルメイカは寿命わずか1年の短命な回遊魚です。秋から冬にかけて東シナ海や九州沖の産卵場で生まれ、対馬暖流に乗って北上しながら成長し、大和堆などの日本海中央部で成育します。近年の日本海では海水温の急激な上昇や海流パターンの変化が観測されており、稚イカ(幼生)が生き残るための適水温エリアが著しく縮小。成育場に到達する前に個体群が大きく損なわれているという科学的データが提示されています。
盲点2:EEZ外側(公海・ロシア水域)における「合法的な根こそぎ操業」
世論の批判は「EEZ内への密漁侵入」に集中しますが、真の脅威は「EEZ境界線のすぐ外側」で行われている合法・半合法的な超大規模操業です。中国の大型トロール船や灯船群は、人工衛星画像でも確認できるほど境界線ギリギリの公海水域に数千隻規模で連なり、大和堆へ入ってくる手前のイカの回遊ルートを完全に遮断しています。日本の主権が及ばない海域で根こそぎ獲られてしまうため、大和堆自体にイカが入ってこないという「回遊遮断の罠」が発生しているのです。
つまり、現在のイカ不漁は「環境激変による自然減」に対し、歯止めの利かない「巨大資本による過剰漁獲」が追い打ちをかけるという、二重の破滅的スパイラルによって引き起こされています。