西川美和監督が手掛けた映画『すばらしき世界』において、名優・役所広司と対峙した若手テレビディレクター役は、日本映画の歴史に残る名演として高く評価されている。元受刑者の主人公に好奇心で近づきながら、次第に葛藤し、自らの不甲斐なさに打ちのめされていく青年の心理描写は鳥肌が立つほど鮮烈だった。
数々の映画賞を総なめにしたこのヒューマンドラマで見せたのは、相手の芝居を全身で受け止める受容の力だ。自分が前に出るだけでなく、共演者の魅力を極限まで引き出しながら作品全体のリアリティを底上げする。玄人筋が「彼がいる現場は絶対に破綻しない」と口を揃える理由がここにある。