一般的な博物館の改修であれば数ヶ月から1年程度で完了するケースも珍しくありません。なぜ江戸東京博物館は4年近くに及ぶ異例の長期休館を必要としたのでしょうか。その真相を紐解くと、メガストラクチャー特有の建築的構造と、国宝・重要文化財を含む約60万点もの貴重な資料を次世代へ引き継ぐための必然的な理由が浮かび上がってきます。
最大の理由は、1993年(平成5年)3月の開館から30年が経過したことによる設備の老朽化です。同館の延床面積は約3万平方メートルに及び、地上7階・地下1階という巨大な空間を有しています。特に博物館心臓部である温湿度管理空調設備、消火防災設備、大容量受変電設備は、24時間365日稼働し続けてきたことで耐用年数の限界に達していました。デリケートな浮世絵や古文書、木造工芸品を虫害や急激な湿度変化から守るためには、展示室のみならず収蔵庫全体の空調系統を完全に停止し、全系統を根底から交換する必要があったのです。
さらに、バリアフリー基準の現代化と省エネルギー化(脱炭素化・LED照明への全面換装)への対応、巨大地震を想定した非構造部材の耐震補強工事も同時に行われました。展示物を一度すべて館外のセーフティな温調保管エリアへ退避させ、巨大な建築空間を空にして構造検証を行うという前代未聞のオペレーションが、数年という歳月を要した決定的な背景です。