犯行に使用された薬品は、医療現場で手指や医療器具の消毒に広く用いられている塩化ベンザルコニウムを主成分とする消毒用界面活性剤「ヂアミトール」でした。なぜ加害者は劇薬や毒物ではなく、身近な消毒液を凶器に選んだのでしょうか。
法廷での審理において明かされた点滴 界面活性剤 理由は、極めて計画的かつ巧妙なものでした。当時、大口病院のナースステーション内では消毒液が施錠管理されることなく日常的に誰でも手に取れる状態で置かれており、入手が極めて容易だった点が挙げられます。さらに、界面活性剤は点滴内に混入しても目に見える沈殿や濁りが生じにくく、無色透明な点滴液と見分けがつかないという特性を悪用したものでした。
ヂアミトールが血管内に直接注入されると、赤血球の細胞膜が破壊される溶血発作を引き起こし、多臓器不全や急性心不全を誘発します。終末期医療の現場では高齢患者の容態急変が日常茶飯事であったため、外見上の変化が少ない界面活性剤を用いることで、自らの犯行が医療事故や自然死として処理されることを狙った卑劣な計算が働いていたのです。