彼女の原点を語る上で欠かせないのが、戦前・戦後を通じて名バイプレイヤーとして愛された父・十朱久雄の存在だ。偉大な父の背中を見て育ち、少女期に芸能界へ足を踏み入れた十朱幸代は、当初「二世俳優」という色眼鏡で見られる重圧とも戦わなければならなかった。
だが、彼女はその宿命を圧倒的な実力で跳ね返した。舞台『奇跡の人』などで見せた鬼気迫る演技は批評家たちを唸らせ、やがて演劇界において単独で大劇場を満員にする押しも押されもせぬ大スターへと成長を遂げる。父から受け継いだ役者魂を胸に、自らの足で築き上げた金字塔は、今なお演劇史に深く刻まれている。