作者である藤子・F・不二雄が生涯を通じて描き続けたのは、「S・F(少し不思議)」という日常の延長線上にある驚きだけではない。小学館の学年別学習雑誌などで連載されながら、彼が徹底して物語の中心に据えたのは、完璧ではない人間の弱さと、それでも前を向こうとする心の気高さだった。
のび太は勉強も運動もできず、臆病ですぐに泣き言を漏らす。しかし、彼が決して失わない美徳がある。それは、他者の痛みに寄り添い、どれほど打ちのめされても立ち上がろうとする不屈の優しさだ。藤子・F・不二雄の手によるSFアニメとしての緻密なプロットは、突飛な未来のひみつ道具を通じて、人間の感情の揺らぎや道徳的ジレンマを鮮烈に炙り出すための舞台装置として機能している。