大森南朋の人間的な厚みを語る上で欠かせないのが、類まれなる芸術一家の血筋である。父は舞踏集団「大駱駝艦」を率いる前衛舞踏家であり怪優の麿赤兒。兄は映画『さよなら渓谷』や『MOTHER マザー』など、人間の深淵を描き切る日本屈指の映画監督・大森立嗣である。
表現者としての業と自由を間近で見て育った彼らが所属する有限会社アパッチは、商業主義に迎合しすぎず、作家性の高い映画や骨太な企画に役者を送り込む個性派エージェントとして知られる。妻の小野ゆり子も同社に所属し、舞台やドラマで着実に演技派としてのキャリアを積み重ねてきた。家庭内に共通する「表現への敬意」が、夫婦関係の土台に揺るぎない安定をもたらしている。