八百長認定によって突如として髷(まげ)を落とされ、角界を追われた力士たちのセカンドキャリアは、まさに光と影が交錯する激動のものでした。
最も劇的な軌跡を辿ったのが、中国・内モンゴル自治区出身の蒼国来(そうこくらい)です。蒼国来は「メールも一切送っておらず、金銭も受け取っていない。八百長など絶対にしていない」と主張し、引退勧告への署名を断固拒否。解雇処分を受けた後、日本相撲協会を相手取り力士としての地位確認を求める民事訴訟を東京地方裁判所に起こしました。
約2年に及ぶ法廷闘争の末、2013年3月に東京地裁は「八百長に関与したと認めるに足りる証拠はない」として解雇を無効とする全面勝訴判決を言い渡しました。相撲協会も控訴を断念し、蒼国来は前代未聞の現役幕内復帰を果たしました。復帰後も土俵で健闘を続け、2026年に引退した後は師匠の跡を継ぎ年寄・荒汐を襲名。現在も関取を複数抱える人気部屋の師匠として、角界の第一線で堂々と後進の指導にあたっています。
一方、他の元関取たちは角界外での生活を余儀なくされました。巨漢で親しまれた山本山は、その体格とユーモアを活かしてアメリカ・ロサンゼルスを拠点とした相撲イベントやハリウッド映画、CMに出演し、独自のエンターテインメント路線で成功を収めました。
また、豊桜や若天狼らは介護施設での勤務や自らの飲食店経営など、地道に地域社会へ根ざした活動を継続。実力派だった徳瀬川や春日王らは母国へ戻り、現地でのビジネスやスポーツ振興に関わるなど、それぞれが失意の底から10年以上の歳月をかけて新たな人生を切り拓いています。