「優勝賞金1000万円+懸賞金数千万円」という数字だけを見ると莫大な金額だが、税務署と相撲界の掟はその現金をそのまま手元に残すことを許さない。土俵を降りた力士を待ち受けているのが、優勝賞金の税金と確定申告の現実である。
相撲協会の力士は個人事業主の扱いを受ける。そのため、幕内最高優勝賞金や三賞の賞金は税法上「一時所得」または「事業所得」として課税対象となる。力士の年収は幕内上位であれば通常数千万円規模に達しているため、超過累進課税により最高税率45%(住民税10%を加えると実質55%)の最高区分に抵触する。つまり、賞金1000万円の半分以上は税金として消える計算になる。
さらに相撲界には、古くから続く部屋への祝儀と付け人分配という絶対的な金銭慣習が存在する。かつて優勝を果たした元横綱がテレビ特番の告白録で明かしたところによると、優勝決定の夜、支度部屋や宿舎で帯封を切った百万円の札束が次々と飛び交うという。
- 師匠(親方)およびおかみさんへの御礼:数百万円単位の祝儀包み
- 付け人(身の回りの世話をする幕下以下の力士)への分配:1人あたり数十万円の特別小遣い
- 部屋の裏方(行司・呼出し・床山)への寸志:技術と労をねぎらう包金
- 部屋全体の祝勝会・振る舞い酒の費用:後援会やファンを招いた大宴会の全額負担
身銭を切って周囲へ富を分配することこそが「横綱・大関の器量」とみなされる相撲社会において、賞金を一人占めすることは許されない。懸賞金から天引きされた納税充当金、確定申告で納める所得税、そして部屋関係者への分配金をすべて差し引くと、最終的に力士本人の銀行口座に残る純粋な手取り額は、総収入の約4割から5割程度というのが相撲界の公然たる現実である。