食卓でおなじみの香味野菜を巡る最大の疑問、それは大葉と青紫蘇が同じ植物の真相とその境界線です。植物分類学上、どちらもシソ科シソ属の一年草であり、種や品種としての違いは一切ありません。学名は Perilla frutescens var. crispa であり、植物としての正式名称(和名)はあくまで「シソ(紫蘇)」、そのうち葉が緑色の品種群を「青じそ(青紫蘇)」と呼びます。
では、なぜ「大葉」というまったく別の呼称が定着したのでしょうか。その発端は、しそと大葉の違いと歴史由来を紐解くと、高度経済成長期の青果市場における商品管理の工夫に行き着きます。
かつて日本の市場では、シソ科植物の成長段階に応じて複数の部位が取引されていました。刺身のあしらいに使われる発芽直後の双葉「芽じそ(青芽・紫芽)」や、花が咲いた後の「穂じそ(花穂・実穂)」など、多種多様な形態が存在したのです。そうした状況下で、1961年(昭和36年)頃、静岡県の青果市場において、「青じその葉そのもの」を10枚単位などで束ねて出荷する際、芽じそや穂じそと明確に区別するための商品名として名付けられたのが「大葉」の始まりとされています。
その後、一大生産地として台頭した愛知県豊橋市の農協組織などがこの名称を採用し、大消費地である東京などの市場へ積極的に出荷したことで、大葉という名前の発祥と流通が一気に全国規模へと拡大しました。つまり、「青じそ」は植物・品種名および加工品全般を指す包括的な名称であり、「大葉」は生鮮野菜として売場に並ぶ葉の部分を指す流通発祥の通称なのです。